2012年10月24日水曜日

「貧困のブラックホール」:自営業720万人時代

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朝鮮日報 記事入力 : 2012/10/24 14:19
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/10/24/2012102401440.html

「貧困のブラックホール」自営業720万人時代

414万人は月収入100万ウォン未満
「ハイリスク・低収益の罠」
半数は3年以内に廃業…50代自営業者は30%に急増   

 ソウル市内に住むキムさん(51)は3年前に会社を辞め、不動産仲介士の資格を取った。
 古い住宅の建て替えが進む再開発地域で不動産仲介業を始めたが、競争が激しい上に経験不足ということもあり、6カ月間で1件しか契約が取れなかった。

 不動産仲介業をあきらめたキムさんは料理教室に6カ月間通って調理師の資格を取得、昨年初めに若者の街、弘益大エリアでチャジャンミョン(韓国風ジャージャーめん)店をオープンさせた。
 若者層をターゲットに低価格で勝負しようとしたがうまくいかず、1年もたたないうちに廃業した。
 そして今年初めには、スーパーとは名ばかりの小さな雑貨店を買収、3度目の自営業に挑んだ。
 しかし、近所にコンビニエンスストアがオープンしたため、またまた苦戦を強いられている。
 キムさんは
 「子どもたちはまだ学校に通っているのでいろいろとお金がかかる。
 あらゆることをやってみたが、どれもうまくいかない」
と言ってうなだれた。

 多くの人々が自営業を「ハイリスク・ハイリターン」のゲームだと思っている。
 リスクも大きいが、うまくいけば大成功するものと期待しているのだ。
 しかし実際のところ、韓国の自営業は「ハイリスク・ローリターン」のゲームだ。
 失敗の危険性が高く競争が激しいため、高収益を得る可能性がかなり低いということだ。

 本紙が民間経済研究機関「現代経済研究院」と共同で統計庁の資料などを基に自営業の実態を調査したところ、起業して3年続いた自営業者は46.4%にとどまった。
 中小企業庁の実態調査では、自営業者が昨年手にした純利益は月平均149万2000ウォン(約10万4000円)に過ぎなかった。
 職に就くことができず最低限の生活費を支援してもらう国民基礎生活受給者(日本の生活保護受給者に相当)=4人家族基準=とほぼ同じ額だ。
 また、自営業者の57.6%は1カ月の収入が100万ウォン(約7万円)以下だった。これを経済協力開発機構(OECD)の資料に基づき
 「2010年現在で、韓国では就業人口の28.8%を自営業者が占める」
という割合で全自営業者数を算出すると、そのうち約414万人が月100万ウォンの収入も得られていないことになる。

■「貧困のブラックホール」になった自営業

 それでも最近、自営業者が急増している。
 ベビーブーム世代(1955-63年生まれ)で会社を退職する人が増え、起業せざるを得ない状況に追い込まれていることが主な原因だ。

 建設会社の役員を務め退職したチョンさん(56)は昨年、5億ウォン(約3500万円)を投じてソウル・江南地域のテヘラン路近くに70坪(約230平方メートル)の店を借り、大規模な輸入ビール専門ビアホールをオープンさせた。
 オフィスが密集している地域のためうまくいくと思っていたが、現実は違った。
 週休2日制の会社がほとんどのため金曜日の夜から日曜日までは開店休業状態で、平日でも日中は客が入らなかった。
 売り上げは伸びず、2000万ウォン(約140万円)の店舗賃借料と従業員8人の給料まで払うとなると、赤字は雪だるま式に膨れ上がった。
 結局、1年もたたないうちに投資額の半分も戻らないまま先日、店を閉めた。

 統計庁の経済活動人口調査に基づき推算したところ、2007年から11年までの間に20-40代の自営業者数は減ったが、50代は年平均2.5%ずつ増加していることが分かった。
 50代の自営業数は186万人から206万人に増えている。
 09年は起業した人の約4分の1がその1-2年前に会社を退職した人だった。

 だが、成功する確率は極めて低い。
 零細自営業者の廃業が多いため「もうかるのは看板屋ばかり」と言われるほどだ。
 事実、04年から09年までの統計庁資料を分析した結果、自営業者が多い飲食・宿泊業は年平均12万4000店が新規で事業を始める一方、12万7000店が廃業していることが分かった。

■借金して起業、借金の泥沼にはまる

 「起業さえしていなければ…」

 イさん(53)は07年に会社を退職してすぐに印刷会社を設立した。
 資金は退職金2億ウォン(約1400万円)をはたいた。
 コンピューター関連会社に勤めていた経歴を生かし、コンピューターグラフィックスでチラシ・名刺・カタログを製作・納品した。
 知人が協力してくれたおかげで起業当初は収入も良かったが、6カ月後に危機が訪れた。
 紙・インクなどの原材料費は値上がりする一方、印刷物の値段は逆に下がった。
 印刷会社同士で値引き合戦が起きたからだ。
 名刺100枚当たり3万ウォン(約2100円)だったのが、500枚で1万5000ウォン(約1050円)にまで下がった。
 イさんの会社は赤字が出始め、負債は雪だるま式に膨れ上がっていった。
 結局、自己破産したイさんは借金の一部が帳消しになったが、残りの借金は重機を運転する仕事をしながら返済している。
 イさんは
 「起業ではなく、再就職のための教育を受けるなどして別の仕事を探すべきだった」
と後悔している。

 自営業者が経済的に苦しいのは、多額の借金をして起業することにも原因がある。
 統計庁によると、自営業者の昨年の平均個人負債額は8500万ウォン(約590万円)で、一般社員の5100万ウォン(約350万円)に比べ3400万ウォン(約240万円)多い。
 これは、開店時に必要な費用が平均6570万ウォン(約460万円)にも達するためだとみられる。




朝鮮日報 記事入力 : 2012/10/26 14:33
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/10/26/2012102601573.html

所得下位20%層、収入の43%を債務返済に



 日雇い労働で月に70万-80万ウォン(約4万8500-5万5500円)を稼ぐアン・ミンチョルさん(40・仮名)は最近ため息をついてばかりだ。
 2年前に生活苦で離婚したが、今でも借金漬けだからだ。
 小さな部屋を借り、生活費に充てるためにあちこちからかき集めた借金が2000万ウォン(約139万円)を超えた。
 貸金業者、個人からの借金は、金利が年20-30%に達する。
 アンさんは
 「どんなに稼いでも80万ウォンの収入しかないのに、利子だけで30万ウォンが出ていく。
 元金の返済できるめどは立たず、生活に余裕がある親戚が頼ろうかと悩んでいるところだ」
と話した。

 統計庁がまとめた昨年の家計金融調査結果を本紙が分析したところ、アンさんのように所得下位20%に属する貧困層351万世帯のうち、116万世帯が借金を抱えており、そうした世帯では所得の43%を債務返済に充てていることが分かった。
 所得層を問わず借金がある世帯全体の収入に占める債務返済額は平均 20%だが、その2倍を超える数値だ。

 平均年収は733万ウォン(約51万円)なのに対し、債務返済額は年間312万ウォン(約22万円)に達する計算だ。
 借金を返すと、生活費として使える資金は年間421万ウォン(約29万円)で、月当たり30万ウォン(約2万1000円)余りにすぎない。

 所得下位20-40%の層(209万世帯)でも収入の32%が債務返済に消えている。

 金融専門家は、正常な生活を営む上で、収入に占める債務返済額の割合の上限は30%だと指摘する。
 それを基準にすると、所得下位40%のうち、借金がある325万世帯は生計を営むのが困難な水準にあることが分かる。

 所得が少ない層ほど、金融機関が融資を渋るため、債務を抱える世帯の割合は低い。
 所得下位20%のうち借金がある世帯の割合は33%にとどまっているが、所得が高いほど借金がある世帯の割合は高く、所得上位20%の世帯では77%に達する。
 問題は、貧困層は借金をするのは難しく、一度借金をすると、所得に対し返済負担が重くなり、正常な生活が困難になることだ。

 貧困層の重過ぎる債務負担は、首都圏で特に深刻だ。
 首都圏の所得下位20%の世帯のうち、借金を抱える52万世帯は、所得の64%を債務返済に充てていることが分かった。
 首都圏では住居費や物価水準が相対的に高いためだ。

 所得が高い層は、借金があっても、所得に占める割合ははるかに低いことが分かった。
 所得上位20%の世帯では、所得に占める債務返済額の割合は16%にすぎず、上位20-40%の層でも23%だった。
 韓国開発研究院は
 「所得上位40%による債務規模は全体の4分の3を占めるが、この層の所得を考えれば、不良債権化のリスクは低い」
と指摘した。

 結局、韓国経済の弱点である家庭の債務問題は、貧困層の連鎖的な破産という形で表面化する可能性が高い。
 このため、低所得層の債務問題がさらに悪化する前に対策が急がれる。

 まず指摘されているのは、低所得層の債務の利払い負担を軽減することだ。
 尹暢賢(ユン・チャンヒョン)金融研究院長は
 「低所得層の個々人の債務規模は小さいが、債務返済負担で基本的な生活すらできなくなり、借金が借金を呼ぶ悪循環に陥ることが問題だ。
 利払い負担を大幅に軽減する方策を検討すべきだ」
と指摘した。
 尹院長は
 「庶民向けの金融商品を活性化し、貸金業者や個人金融による高利の借金の借り換えに道を開くことも一策だ」
と提言した。

 このほか、現在年39%と定められている貸金業者の最高金利を引き下げるべきだという主張もある。
 金融当局の幹部は
 「上限金利を引き下げれば、貸金業者が融資を減らし、むしろ庶民の資金確保が困難になるとの主張もあるが、優良貸金業者は調達金利が低く、金利を引き下げる余力がまだある」
との認識を示した。

 崖っぷちに追い込まれた低所得層の一部は、元利金の返済を減免する制度を検討すべきだと主張する。
 金融当局は最近、銀行別に低所得層の利払い負担軽減、返済繰り延べなどを活発化するよう勧告した。







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